コラム
Vol.45 海賊とよばれた男
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2013/02/01
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- 海賊とよばれた男
海賊とよばれた男
読まれた方も多いと思いますが、私がお世話になった出光興産の創業者(社内では店主と呼んでいます)出光佐三の実話をベースに書かれた「海賊とよばれた男」がベストセラーになっています。方向性を見失ったり、人間関係に悩んだり、やる気が停滞している方々に是非読んでいただきたいです。出光佐三の信念の強さ、真摯さに心を打たれ、心をリセットできると思います。私も電車の中で涙を流しながら読みました。今回は、私が実体験した出光興産という会社の内側について述べたいと思います。
社外に出て思ったことは、出光興産という会社は、創業者の出光佐三の経営理念と各施策がトータルシステムとして良くできていたことです。いくつかその施策をご紹介します。
1.タイムレコーダーがない(時間で仕事をしていない)
「大家族主義」「人間尊重」という理念のもと、社員を時間で管理することはしていませんでした。残業・休暇などという概念はありません。だから、時間を意識して働いたことがありません。これは、自分の20代で一番大きな財産でした。夜も12時近くまで働き、土日もどちらかは出社していましたが、ビジネスの知識習得にとても良い時間でした。毎日、仕事が楽しくてしょうがなかったです。あるホテルが残業問題でシェフに残業させることができず、シェフ育成が遅れていると嘆いていましたが、本人にとっても、会社にとっても残念な話です。働きたくても働けない人がいて、とても可愛そうです。早く労働法が改正されると良いのですが。
2.権限規程がない
「一人ひとりが経営者」という理念のもと、権限規程がありませんでした。(そもそも就業規則も含めて見たことがありませんでした。会社を100%信用していたため、見る気すらおきませんでした。)だから、自分の仕事は自分で創造し、自分で権限を増やしていきます。上司から指示を受けた経験もないですし、上司や本社が間違った指示をしたと思ったら、やらないことが多かったです(今から思うと嫌な部下です)。稟議書もなく「回議書」という名称の書類を社内に回しました。あくまでも決定権は本人にあるという意図です。今から思うと、この権限規程のないことが社員の成長促進に役立っていました。どんどん権限を拡大していきますから、主体性が出て、入社5年目ぐらいの中堅になると支店や課の方針をどんどん決めていました。
3.組織の一体感を強める機能がある
「大家族主義」という理念のもと、様々なコミュニケーションの仕掛けがありました。1つには社内交際費なる予算があり、よく働き、よく飲みに行きました。部活も活発に開催されており、私はラグビー部で多くの親友を得ました。家族会という催しがあり、家族が一堂に会する会がありました。支店では販売店さんの家族も一緒です。一緒の時間を共有することにより、絆が生まれ、信頼が生まれ、仕事でのコミュニケーションコストは極限まで低かったと思います。会社を辞めるとき、この「人との繋がり」いう財産が無くなるのが一番怖かったです。
4.報酬を気にしないで仕事ができる
「給与は生活給」「仕事の成果は仕事で返す」という理念のもと、報酬がどう決まっているか知りませんでしたし、自分の評価も分かりませんでした。社内では「他人と給与明細を見せ合うな」という暗黙のルールがあり、お互いの給与を気にしないで働けました。出光興産を退社して分かりましたが、ちゃんと「評価」より「評判」に近い形で、念入りに評価をしてました。一人ひとりに時間をかけて、個性の見極め・評価・育成の方向性を共有しており、人材育成システムはきっちり出来上がっていました。
5.理念手段が確立している
店主室という理念を守り・浸透させる組織がありました。社内には出光佐三が社員に残した本が30冊ほどあり、自問自答会という組織横断型のグループで、それらを読み合わせながら自分の体験と重ね合わせていました。社員教育も自前主義で、キャリアデザイン研修などでは理念をどう自分のキャリアに結び付けるかを考え抜きました。この理念は、会社を辞めた今でも生き続け、現在のグローセンパートナーが正しい舵取りができているのは、出光佐三の理念がココでも生きているからだと感じます。
このような理念のもとに、それぞれの施策が考案され、整合性があったのが出光の経営システムです。このシステムを作り上げた出光佐三は素晴らしい創業者だと思います。その人間本来の経営システムを経験できたことは、現在の自分にとってとてもプラスになっています。いつか人を信頼した経営システムが世界の標準になることを祈念しています。
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