コラム

Vol.171 組織の成熟を高めるカギは「女性マネジャー」の登用?!

2025/01/16

組織の成熟を高めるカギは「女性マネジャー」の登用?!

女性活躍推進が叫ばれ20年が経過して、女性活躍推進法が制定され10年が経過しました。さらに、金融庁は2023年3月期決算から「有価証券報告書」に人的資本の情報開示を義務化しました。企業の多様性を測る指標として「女性管理職比率」「男性育児休暇取得率」「男女の賃金格差」の項目が新たに盛り込まれました。

今回は、女性活躍推進と組織の成熟度の関係について、最近感じていることに触れます。

最近のマネジャー向け研修で感じるのは以下の点です。

  • マネジャー向け研修などで女性の割合が増えてきた。
  • 研修内のグループ討議などで、女性がリーダーシップを発揮する機会が増えてきた。

また、講師としてこんなことを気にしています。

  • 研修スタート前に、グループに女性がいるかを確認しています。女性が入ると場が活性化し、グループ討議での対話が深まる傾向があるからです。(他の研修会社の社長さんも同様の意見をおっしゃっていました)
  • 一方で、男性ばかりのグループが形成されると、互いにけん制し合い、表面的なグループの対話に終始する傾向があると感じています。
  • 抽象度の高い研修(自分のありたい姿を描くなど)では、女性がリーダーシップを発揮するケースが増える傾向があります。

さらに、最近、組織風土の観点として、女性のマネジャー割合が高い組織ほど、男性に中性的なリーダーシップを発揮する方の割合が増えると感じています。

この現状について、考察を深めます。

成人発達理論の発達段階と、IQとEQとの関係

最近、鈴木規夫さん(日本のインテグラル理論や成人発達理論の第一人者)から定期的にアドバイスを受けており、その中で非常に興味深い話がありました。日本では大規模な発達測定は行われていませんが、鈴木規夫さんによると、「成人発達理論の発達段階は、IQ(知能指数)とEQ(心の知能指数)との相関性があるのではないか」とのことでした。

興味深いのは、日本人のIQとEQの特徴です。日本人のIQは世界でトップクラスですが、EQはなんと世界最下位という結果が出ているそうです。驚くべきことに、EQに関しては、北朝鮮(ここで出すのは申し訳ないのですが)より低いのです。

すこし、IQ・EQについて解説を加えます。

IQ(Intelligence Quotient)は、「知能指数」のことです。皆さんも測定した経験があるかもしれません。IQが高いと「論理的思考にたけている」「情報処理が早い」「インプットが得意」「好奇心旺盛」などの特徴があります。

EQ(Emotional Intelligence Quotient)は、「心の知能指数」とも訳されます。「自分と他の人の感情を監視し、異なる感情を区別して適切にラベル付けし、感情情報を使用して思考と行動を導く能力」と定義されています。EQが高いと「自己認識が高い」「自己調整ができる」「社会的スキルが高い」「共感力がある」「動機づけができる」などの特徴があります。

「成人発達理論の発達段階は、IQとEQとの相関性がある」と仮定すると、発達段階を上げるためには、EQを高めることが必要だと言えます。具体的には、「自己認識力」「自己調整力」「社会的スキル」「共感力」「動機づけ」などを磨く必要がありそうだという結論になります。

男性性と女性性のリーダーシップ

ここで視点を変えて、男性性・女性性のリーダーシップについて話を展開します。男性性・女性性のリーダーシップについてChatGPTに整理してもらうと、以下のようになりました。

男性性のリーダーシップの特徴
力強さ・決断力・論理的・思考・粘り強さ・行動力・リスクをとる・持続力・客観性・推進力・自己主張
女性性のリーダーシップの特徴
共感力・柔軟性・傾聴・直感力・協調性・創造力・包容力・調和性・感情的・知性・支援力

このように整理してみると、男性性のリーダーシップはIQとの関連性が強く、女性性のリーダーシップはEQとの関連性が強そうです。

そして、男性性と女性性のバランスは重要です。男性性が強いと、人の話に耳を傾けなくなり、何でも一人で決めてしまう傾向があります。それが、内省≒発達促進を遅らせる原因になります。

これは個人でも組織でも同様に言えるのではないでしょうか。

線形思考と非線形思考

「思考」の観点から表現すると、男性性は線形思考が強く、女性性は非線形思考が強いと感じています。

線形思考:論理的思考とも言われ、因果関係がはっきりつなげられる思考
非線形思考:因果関係がはっきりせず、複雑に絡み合い、多面性の高い思考

非線形思考は、複雑性が高い問題や、未来が不確実で曖昧な状況下で重要です。現在、VUCAの時代とも言われる中で、非線形思考の重要性が増しており、そのためにも女性性のリーダーシップは不可欠だと考えます。

最後に

ここまでの整理と結論です。

  • 成人発達理論の発達段階は、IQとEQとの相関性があるとすると、「EQの向上支援」は大切な施策である。
  • 女性性のリーダーが増えることで、組織のEQが高まり、組織が活性化し、多様性が増す。
  • マネジャーの女性登用が進むと、対話が深まり、男性のリーダーシップも男性性と女性性のバランスが取れ、良質なリーダーが増えることが期待できる。
  • VUCAの時代には、経営層やマネジャー層の非線形思考が必須であり、女性性のリーダーシップを増やすことが会社の存続にとっても必須である。

女性活躍推進やD&I推進をしっかり進めてきた会社は、マネジャー層の底上げや良質な経営者候補を育成しやすくなるという蜜を手に入れることができます。一方で、男性性が強すぎると、前例や慣習、ルールにこだわる傾向が強くなり、新しい創造性や柔軟性を欠くため、組織の成長を阻害することになります。

今年こそ、「女性マネジャーを増やすこと」を経営の最優先課題に掲げてみてはいかがでしょうか。

年末年始に、堀江敦子さんの『女性活躍から始める人的資源経営』を読みました。女性活躍推進が必要な背景(経営層への説得材料)から、具体的な人事施策まで非常に参考になります。

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