コラム

Vol.169 心の成長の促進のために「味わい尽くすこと」の大切さ

2024/11/21

心の成長の促進のために「味わい尽くすこと」の大切さ

心の成長は、味わい尽くす時期と、次の発達に向けて準備に入る時期があります。企業の人材育成においては、発達促進させたいために次のステップを目指す傾向がありますが、実は味わい尽くすから次への扉が開くのです。

我が家では、娘がYoutubeを見ていても、基本的に「やめなさい」とは一言も言いません。没頭する(味わい尽くす)といつかは飽きるのを知っているので。逆に、今の没頭を奪うと、欲求が残り、余計今の没頭(Youtubeなど)が長引きます。つまり、子供の発達が遅れると思っています。

社会人に多くみられる発達段階について、「その段階を味わい尽くす」という観点でみてみましょう。

環境順応型知性(発達段階3.0):若手社員

若手社員に多く見られる発達段階です。周囲の環境に適応できる段階です。この段階にいる人は、周りからの期待を理解し、それに応えることが得意です。一方で、失敗を恐れてチャレンジを避けたり、リーダーシップを発揮することを嫌がります。

環境順応型知性(発達段階3.0)の人に見られる傾向
指示されたことはこなしますが、新しい挑戦やリーダーシップの発揮を避ける傾向があります。例えば、1on1で「もっと積極的に行動してほしい」と指導したり、会議で発言を促しても、「わかりました」と返答はするものの、(積極的な行動に恐れを抱いているので)行動に変化が見られないことが多いです。

環境順応型知性(発達段階3.0)の人へのサポート
対象者がこの段階をしっかり味わい尽くしてから、次の発達のステップへ移れる
ように、以下のような支援を行うとよいでしょう。
・仕事を一人前にこなしていることを承認する
・チームに貢献していることを評価する
・異動や仕事の変化を通じて、自分の軸や専門性に目覚めさせる
・小さな挑戦を褒める
・将来のキャリアについて語り合い、可能性を広げる

自己意識的・専門家的知性(発達段階3.5):スペシャリスト

この段階は、自身の専門性が確立され、専門領域内での意思決定やリーダーシップが期待できる段階です。ただし、その範囲を超えた判断や、横断的プロジェクトや他部門とのコラボレーションでのリーダーシップは苦手とします。専門性へのこだわりが強く、自己成長や自身の軸の確立を優先しがちで、人材育成や協働は後回しにする傾向があります。

自己意識的・専門家的知性(発達段階3.5)の人に見られる傾向
自分の専門性に強いこだわりを持ち、人材育成や協働に対して消極的な傾向があります。例えば、「後輩の育成にもっと取り組んでほしい」と指導したり、プロジェクトリーダーを任せたり、チームプロジェクトへの参加を求めると、(自分がやっていることに自信があるので)不満そうな態度を見せたり、明確に拒否することが多いです。

自己意識的・専門家的知性(発達段階3.5)の人へのサポート
対象者がこの発達段階を味わい尽くせるように、以下のような支援を行うとよいでしょう。
・専門性をさらに磨く時間を提供する
・専門分野で活躍している場面を褒める
・より高い専門性を持つ人と仕事ができる環境を作る
・自分の知識や専門性を披露する勉強会の機会を提供する

自己受容型知性(発達段階4.0):マネジャー・役員

この段階では、総合的な思考が可能で、自律的に行動し、明確な「ありたい姿」を持ちながら、価値基準に基づいて行動できます。しかし、自らの価値基準が他者と対立すると、それを他者に押し付ける傾向があります。

マネジャー・役員は、この発達段階に到達していることが望ましいと考えています。しかし、最近の課題意識として、この段階に到達する前にバーンアウトするケースが多いように思います。特に技術職や開発職にその傾向が見られます。

それは、自己意識的・専門家的知性(発達段階3.5)の段階で、十分に専門性を磨く時間が確保されず、目の前の業務に忙殺され、その間に専門性が陳腐化してしまうことが要因の一つと考えられます。これにより、自己に対する失望や防御的・攻撃的な姿勢が現れることもあります。

能力の成長と心の成長がバランスよく遂げられたマネジャーを育成するためには、専門性を磨くための十分な時間をゆっくり与えて欲しいものです。

私自身、30代前半の頃、仕事中にこっそり勉強をしていました。車での移動中には録音した教材を聞きながら学校の復習をし、時には資格取得のため学校に立ち寄ると、隣の課の課長も同じように学んでいる姿を見かけることがありました。学ぶことを許容してくれる組織風土で育ったことは、とても恵まれていたと思います。

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