コラム

成人発達理論と忙しさからの解放~マネジャーの疲弊を解消するためにできること~

2024/10/16

現場のマネジャーは忙しさに忙殺されている

現場のマネジャーが疲弊しているという声をよく耳にします。マネジャーは下記のような業務を抱えているため、時間の使い方が上手でない限り、目の前の作業に忙殺されがちです。

  • マネジャーであっても、プレイヤー業務を抱えている。
  • 会社や部門のビジョン遂行など、将来に向けた業務を抱えている。
  • 突発的なトラブルやクレーム処理にも対応する。
  • 会議やメール対応に追われている。特に、参加しなければならない会議が多い。
  • 部下のサポート(勤怠管理、目標管理の運用、人材育成など)も求められる。
  • 上司から報告資料や会議のための資料を求められる。
  • コンプライアンス順守やリスク管理業務も担当する。
  • 残業時間削減の影響で、部下の仕事まで請け負うことがある。
  • マネジャー自身の自己啓発やトレーニングの時間も求められる。

こうしてマネジャーの役割を列挙すると、すべてを完璧にこなそうとすれば、疲弊するのも当然と感じます。長時間労働と高ストレスにさらされ、忙しく動き回るマネジャーに精神的・肉体的ダメージが蓄積されていくことは、容易に想像できます。精神的に追い込まれるマネジャーがいるのも、無理はないでしょう。

スマートに業務をこなすマネジャーになるには?

一方で、スマートに業務をこなしているマネジャーも存在します。こうしたマネジャーは、いつも余裕があり、話しかけやすい雰囲気を持っています。

そこで、私たちは「忙しさの軽減」をテーマにした研修を提供しています(研修名は「忙しさからの解放研修」)。この研修では、将来に向けた時間を確保し、コミュニケーションなど他者に向けた時間の大切さを伝えることに焦点を当てています。これらの時間を確保するために、プレイヤー業務を整理し、「やめる仕事」「変える仕事」「任せる仕事」の意思決定を促す内容になっています。

参加者からは様々な反応がありますが、私見として、仕事の断捨離に対する意思決定と成人発達理論の発達段階には関連性があると考えています。以下に、各段階の特徴と仕事の断捨離に対する反応をまとめました。

仕事の断捨離と発達段階の関連性

環境順応型知性(発達段階3.0)
環境順応型知性は、周囲の環境に適応できる段階です。この段階にいる人は、周りからの期待を理解し、それに応えることが得意です。一方で、ありたい姿を自ら描いて周囲に提示することや、集団の常識を覆すような発想や行動をすることは苦手です。

この段階のマネジャーに仕事の断捨離を提案すると、次のような声が挙がります。

  • 「仕事の断捨離なんて考えたことがありませんでした」
  • 「どれも大切なので、やめる仕事や任せる仕事が見当たりません」
  • 「部下も忙しそうなので、仕事を任せるのは酷だと思います」

言われた仕事や慣習的に行ってきた業務に問題意識を持ちにくく、改善しようという意識が弱いのが特徴です。

自己意識的・専門家的知性(発達段階3.5)
自己意識的・専門家的知性は、自らの専門性が確立する段階です。この段階では、専門領域内での意思決定やリーダーシップが期待できますが、その範囲を超えた判断や、横断的なプロジェクト、他部門とのコラボレーションでのリーダーシップは苦手です。専門性への執着が強く、自己成長や自身の軸の確立に焦点を合わせる傾向があるため、人材育成や協働を後回しにしがちです。

この段階のマネジャーに仕事の断捨離を提案すると、次のような声が挙がります。

  • 「忙しいと感じたことがありません」
  • 「すでに改善すべき部分の断捨離は終わっています」
  • 「良い忙しさと悪い忙しさがあると思います」

自分の軸ができてきているので自らの言葉で主張します。しかし、専門分野での仕事に(楽しんで)没頭しているため、自分が自らや周囲を忙しくしている状況には気づけません。自分軸で主張できますが、考慮できる範囲が狭い段階です。

自己受容型知性(発達段階4.0)
自己受容型知性は、総括的な思考ができ、明確なありたい姿を持ちながら、自律的な行動ができる段階です。価値基準に基づいて行動しますが、自らの価値基準と他者の間で対立が生じると、自らの基準を他者に押し付ける傾向があります。

この段階のマネジャーに仕事の断捨離を提案すると、次のような反応があります。

  • 「これを機に、周囲を巻き込んで仕事の棚卸をしてみます」
  • 「断捨離ミーティングとは面白いですね。自部署でも試してみます」
  • 「全社的に、構造的に問題を抱えています。」

論理的に忙しさの軽減の必要性を理解し(ロジカルシンキングが身についている)、組織を巻き込んでという軸が育ち、改善意欲も高い傾向にあります。自分の主張が正しく、他(会社や部署メンバー)を変えたいという意識が高いですが、それもこの段階の特徴です。

最後に

忙しそうにしているマネジャーは、見ている・見えている世界が狭くなっている可能性があります。自分自身を振り返り、忙しそうにしていないかを内省してみてください。仕事の優先順位がつけられる、仕事の断捨離ができるレベルの発達段階の方をマネジャーに任命したいですね。

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