コラム
マネジャーに必要な「ありたい姿を描く力」~多視点思考で未来を描く~
コラム記事
2024/10/07
ありたい姿の描き方
「マネジャーが火消し型の問題解決に終始して、職場の状況が改善されない」という悩みをよく耳にします。火消し型の解決方法ばかりに頼ると、次のような問題が表面化します。
・業務レベルの向上や人材育成が進まない
・マネジャーも部下も忙しさや慌ただしさから抜け出せなくなる
火消し型問題解決と設定型課題解決
研修では、「火消し型問題解決」と「設定型課題解決」の違いについて説明しています(図表1参照)。火消し型は「現在」に焦点を当て、許容範囲を超えて発生した問題を元の状態に戻すための手法です。一方、設定型課題解決は「半年から1年先」を見据え、目指すべき「ありたい姿」を設定し、現状とのギャップから生じる課題を解決する方法です。
ありたい姿を描くには「多視点思考」が必要
マネジメント研修では、「ありたい姿」を描き、それを実現するためにPDCAサイクルを回すことを伝えています。しかし、ありたい姿を描く演習では、手が止まるマネジャーが3~5割ほどいます。このことから、ありたい姿の概念が薄いマネジャーがいるのではと感じています。
「ありたい姿を描く」ことは、将来のことを具体的に描くことです。ありたい姿をどのように考えればよいのでしょうか?ありたい姿を描ける人は、超能力で将来が見えるのでしょうか?そんなことはありません。
ありたい姿の描き方は、会社を取り巻く経営環境、会社の方針、他部門との関係性、職場メンバーの人間関係や成長度合い、チーム力、自身のマネジメント力など、多岐にわたる視点を考慮することから始まります。これらの要素について、いくつもの点と点をつなぎ合わせ、何度もシミュレーションしながら最適値を導くプロセスで描かれるものです。
ありたい姿を描ける人は、これらの様々な視点をストーリーのように頭の中で描いています(図表2参照)。そして、何か変化が起こったときには、再びシミュレーションし、ストーリーを再構築します。
つまり、ありたい姿を描くには、一度にさまざまな視点で考える「多視点思考」が必要です。これは、仕事中というよりも、移動中やプライベートの時間、お風呂に入ったり、歯を磨いたり、瞑想しているときなどにシミュレーションを重ねて練り上げていく感覚です。
ありたい姿が描けるようになると、解決策がより洗練されます。火消し型の問題解決では、問題ごとに一つ一つ対応策を打つことが多いですが、設定型の問題解決では、ありたい姿を先に考えることで、少ない解決策で対応できることが多いです。また、多視点を考慮しているため、適切な解決策を効率よく絞り込むことができます(図表3参照)。
ありたい姿を描く力を身につける「多視点統合ワーク」
ありたい姿を描く練習のために、研修用に「多視点統合ワーク」という演習を開発しました(図表4)。これは、ある問題を多視点に分解し、それぞれの視点で「ありたい姿」を考えた後、それらを統合して解決策を導くという流れで行います。
例えば、「若手に意見を求めても発言が少ない」という問題に対して、職場風土、若者の傾向、会議の進め方、業務の特徴といった視点に分け、それぞれの視点でのありたい姿を考えます。そして、それらを統合し、全体を満足させるありたい姿を描きます。
これにより、受講者は問題を多視点で捉え、ありたい姿を描くプロセスを理解することができます。
【無料ダウンロード】ありたい姿を描くワークシート
ありたい姿を描く練習のための多視点統合ワークで利用する「ありたい姿を描くワークシート」はこちらからダウンロードしてご活用ください。
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