コラム

データドリブン人事を実践してきた人事担当者に学ぶ
タレントマネジメントシステムの悩みと解決のヒント

2024/04/01

タレントマネジメントに関する悩みと解決のヒント

タレントマネジメントシステム導入・運用にあたっては、さまざまなお悩みを抱えていらっしゃると思います。データドリブン人事を実践している人事担当者に、企業が抱えるタレントマネジメントに関する悩みや質問に答えてもらいました。

こちらの記事もあわせてご覧ください:タレントマネジメントシステムの活用事例を徹底解説

Index

  1. タレントマネジメントシステム運用にかかる人数・労力
  2. 経営層のタレントマネジメントシステム活用について
  3. タレントマネジメント導入の情報収集と情報メンテナンス
  4. タレントマネジメントシステムに社員の顔写真を登録するメリット
  5. タレントマネジメントシステムでの退職傾向の分析について
  6. タレントマネジメントシステムで人材のステータス管理について
  7. タレントマネジメントシステムの人材採用・育成への活用について
  8. タレントマネジメントシステムの活用機能について
  9. タレントマネジメント運用に必要なこと

1. タレントマネジメントシステム運用にかかる人数・労力

Q:一般的にタレントマネジメントシステム運用には、どの程度の人数・労力がかかりますか?

私の前職は従業員が約2500人、現職も正社員だけだと約2500人、契約社員も入れると約4500人ほどです。それくらいの社員数を抱えている会社で、前職も現職もタレントマネジメントシステム導入担当はほぼ私一人なので、一人でも頑張れば何とかできないことはありません。しかしやはり一人だと様々なリスクがあるので、最低二人はいたほうがいいでしょう。

タレントマネジメントはあくまでマネジメント手法の一つなので、採用担当者も育成担当者もタレントマネジメントをやってもらう必要があります。今メインの推進担当は私ですが、タレントマネジメントシステムを使って評価の運用を回したり、研修のeラーニングを作ったりする人はそれぞれ別にいます。もちろん最初は私が使用方法や権限の付け方のレクチャーをしました。あとは、その担当領域の人がいますから、ある程度運用に乗せられるようであれば、少しずつその人に任せる形で全体を統括・推進するようにしています。

そう考えると、一人でできなくもないですが、「絶対できる!」と言うには担当者が二人以上必要かと思います。

労力については、組織の規模に加えてどのくらい改善したいかなどにもよります。私の時間の使い方としては、一日の約6割はタレントマネジメントシステムを使って仕事をしています。

2. 経営層のタレントマネジメントシステム活用について

Q:経営者や社長はどれくらいタレントマネジメントシステムを使いこなしていますか?

当社のトップ層はまだ浸透としてはそこまで出来てはいない状態かなと思います。本来は経営者や役員に使ってもらい、全社の人数推移や今後の人的指標の話(特に次の管理職候補は誰にするのか等)の際に、システムとデータを見ながら対話ができると良いと思います。現状そこまではまだできていないので、今年こそは実現したいところです。

3. タレントマネジメント導入の情報収集と情報メンテナンス

Q:当社はタレントマネジメントシステムを入れようとして失敗し、現在は未使用です。失敗を防ぐにはどこから情報を入れていくべきですか? また、定期的な情報メンテナンスが必須だと思いますが、情報を更新するための工夫はありますか?

基本的な情報に関しては、人事の基幹システムを各社ある程度お持ちかと思うので、そこからタレントマネジメントシステムへの連携が最初はマストです。自動連携できていればベストですが、基幹システム入れ替えがあったりすると連携しきれなくなることもあるので、その時は毎月手動で私が連携していました。連携用の変換ツール(ほとんどただの関数ですが)を自分で作って入れ、「名前と所属、入社・退社」などの本当に基盤的なものだけは、まず揃えるようにしていました。

人事データのアップデートに関しては、まず面談記録からがおすすめです。人事業務に従事している以上、Excelなど何かしらのデータが残っているかと思います。現職でタレントマネジメントシステムのベースを作った後、真っ先に入れたのは面談記録のデータです。一口に面談記録と言っても、当時は「海外赴任者面談用」や「内定者面談用」など、ファイルも保存場所もバラバラという問題がありました。すると例えば「この面談をしましたが、以前人事の方も似たような面談しましたよね?」なんて場面が発生することもあります。既に何か面談をしているなら情報として持っておきたいし、面談前に「この人はどんな人だったかな」と軽く確認できた方がいいでしょう。

面談記録はおそらくどの組織でも大体管理されていると思うので、それをタレントマネジメントシステムに集約するだけでも、少なくとも誰が前に面談していたのか程度は確認しやすくなります。そういったところからのアップデートは手っ取り早くできて、意思疎通にも役立ちます。タレントマネジメントに必要なのは緻密な数値データよりも定性情報だったりするので、面談記録を最新にしておくだけでも全然違ってくると思います。

4. タレントマネジメントシステムに社員の顔写真を登録するメリット

Q:当社で使用しているタレントマネジメントシステムには、社員証の顔写真データが入っています。顔写真があることの人事側のメリットは分かりますが、現場サイドにはどんなメリットがありますか?

当社では保有資格の情報を全社公開しています。例えば「あの計画ではメンバーにこの資格が必要だから、資格保持者に話を聞いてみたい」という時、資格保持者をダッシュボード化してそこに顔写真があったら、Excelよりタレントマネジメントシステムの方がずっと親近感が湧くでしょう。現場のコミュニケーションを円滑にできることは、メリットの一つです。

他にも上司側のメリットで言うと、例えば評価や勤怠を可視化する際も顔写真が入っている方が分かりやすくなります。大きい組織で部下が多かったり、中途入社の上司が部下を評価したりする時にもスムーズです。

特に中途入社の人には、(もちろん最初に顔写真の登録を強めにお願いした上で)タレントマネジメントシステムで「せっかくなので自分の部署のメンバーをダッシュボードで見てみましょう」と、受け入れ先に行く前に顔写真を見せておく取り組みを検討中です。あらかじめ受け入れ先の部署の人にも「この人が入社します。早めに顔を覚えられるといいので、できれば顔写真を入れておいていただけますか」とアナウンスしてもらおうと考えていたところです。等級ごとにグループ化したり一覧表示したりもでき、Excelデータを眺めるよりは顔写真とセットで見ているほうが印象に残りやすいと思います。

5. タレントマネジメントシステムでの退職傾向の分析について

Q:退職の傾向を事前に察知できるような仕組みを求めてデータの蓄積を進めていますが、ノーマークのところから退職の意向が出たりします。タレントマネジメントシステムで退職を察知できるようになった事例がありましたら教えてください。

前職では、本格的な退職の分析を半年に1回ずつ実施していました。随時のものに関してはタレントマネジメントシステムのダッシュボードで月別・年齢別データを蓄積すると、大体の傾向が出ていたのが本当にシンプルで分かりやすかったです。新卒採用の20代後半と中途出身の30代前半の退職がやはり多く、そこに着目していました。あとは部署と残業時間で退職傾向をチェックするようにしていました。

確かに20代後半〜30代前半が退職のボリュームゾーンにはなりますが、予期せぬ退職は当然出てくるので、ある程度はもうしょうがないのかなという気はします。退職希望者が何を求めているのかが第一ですし、人事が面談しようがしまいが辞める人は辞めるので、ここの打ち手に関しては本当に難しいです。日頃から傾向を見て施策の打ち手を少しずつ考えて、それを続けていくしか方法はないと思います。

6. タレントマネジメントシステムで人材のステータス管理について

Q:タレントマネジメントシステムで退職を防止するのは難しいというお話ですが、もしできるとすれば、絶対に逃したくないエース人材だけは捕まえておく、そのステータス管理ならできるぐらいでしょうか?

A:プール人材、フラグ人材と言えばいいでしょうか。そういったエースをマークしておくというのは、タレントマネジメントシステム活用としてはあり得ると思います。それを役員と共通認識で持つことがポイントです。例えば役員とエースがばったり会った時に「じゃあランチ行くか」のような感じでもいいでしょう。人事も役員も他の上司の人たちも「この人は絶対的に育てなければいけない、守らなければいけない」と共通認識を作っておく、ターゲットを決めておくというのはいい手かと思います。

7. タレントマネジメントシステムの人材採用・育成への活用について

Q:タレントマネジメントシステムを入れると、自分の会社に足りない人材などの見える化ができると思います。不足人材の補充指標や、「こういう人に育てたいがこのスキルが足りていない、それならこういう研修をしていこう」というような使い方はされていますか?

A:当社はまだそこまでではないかもしれません。いわゆるキャリア自律の観点で「今後どういうキャリアを目指していくのか、そのために何の能力を身につけなければいけないのか」という分析をやってはいますが、多くが定性情報です。はっきりとスキルマップがあってそこに合わせて育成、といったところまでは正直まだできていないのが現状です。

不足人材の可視化については、各部署で考えてもらう必要があり、当社でも少しずつ現場の上司の方に展開を始めています。タレントマネジメントシステムの画面上で、縦軸が等級・横軸が年齢にしてメンバーを表示すると「この層が足りない」とすぐに見て取れます。先日ちょうど当社のある部署をこの方法で見てみたのですが、シニアか最近入った人しかいません。社内の中堅どころが全然いないことが分かり、後継人材はどうするのかと話題になりました。記憶と経験頼りの人材管理では、どうしても抜けが出てくることは防げないと思います。どの部署の誰にでも同じ見え方をするシステムは、採用で補うべきなのか・育成で補うべきなのか等を考えてもらう材料になります。そういう「現場でも考えてもらう」きっかけを作ることが、タレントマネジメントシステムで実現できたと思います。

8. タレントマネジメントシステムの活用機能について

Q:タレントマネジメントシステムのうち、今一番メインで使っているのは何ですか? 

A:見えていなかったことが見えるようになる、モヤモヤしていたものがはっきりするところが最大のポイントだと感じています。また、Excelでできることももちろんありますが、必要になる都度Excelで作ると時間がもったいないし、タイムラグも発生します。組織は今どういう状況になっているのか、リアルタイムで把握できるのはやはりタレントマネジメントシステムの特徴です。

例えば「今」評価は・後継人材のスタンバイ状況は・研修の受講状況はどうなっているのかが分かりますし、そこから発展すると、研修を受けた人のその後のパフォーマンスなど、「今どうなっていて、その先どうなりそうか」がある程度見られます。それを実現するために、現場に対して「これで業務効率化するので、タレントマネジメントシステムで評価をやりましょう」とか「研修をタレントマネジメントシステムのeラーニングでやりましょう」と提案すれば、人事と他部署のつながりが強化されます。そういうところの積み重ねが大切だと思います。

9. タレントマネジメント運用に必要なこと

Q:タレントマネジメントを行うにあたって多様な視点が必要だと感じました。それは何が源になっているでしょうか?

A:大きく二つあるかなと思います。

一つは基本の理解です。私はタレントマネジメントシステム導入前から、ある程度広く人事業務に携わっていました。例えば休職だったら「産前産後はこういう風にシステムを作らなくては」というような、なんとなくのベースを理解していたのは大きかったです。給与担当の時は「勤怠のこれがこうなってくれていたらいいな」とか、育成担当の時は「採用担当からこういう情報をもらえればよかった」とか、人事は特に前後工程のスキルが大事です。自分の領域だけでなく、自分の次と自分の前の業務があるので、基本的なつながりを理解すること。タレントマネジメントシステム導入前から「(自分とその前後の)これがこういう風になればいいな」と考えていたことも一つでした。

二つ目は徹底的なヒアリングです。今もそうですが、集中するあまり視野が狭くなりすぎては良くないと思っています。「今困っていることはありますか・楽にしたいことはありますか」とか「Excel管理で困っている・本当はシステム化したいことはありますか」とか、いろんな方にヒアリングするようにしています。人事担当にも、現場の方にもです。

私はメーカー・工場という組織に勤めるのは現職が初めてです。工場はメールアドレスもパソコンも持っていない人が圧倒的に多かったので、これまでと同じやり方をしても良くないと最初に感じました。そこで現場の方に「今何で困っているのか」など話を聞かせてもらいました(まず工場側の、一種の味方になってくれるような人を見つけてからになりますが)。すると例えば「スマホでこういう操作ができるならありがたい」など、具体的な現場のヒントを得られるので、それをタレントマネジメントシステムに活かすことができます。

もっと詳しく知りたい方へ

採用や研修に関するセミナーは様々なところで見かけますが、タレントマネジメントのセミナーはシステム会社が主催しているところがほとんど。タレントマネジメントシステムを活用している人たちは、まだまだ孤独です。

採用単体なら経験豊富な上司に相談すれば勝ち筋が見えたりもしますが、上司もタレントマネジメントシステムの全てを分かっているわけではないので、自分で考えて自分で解決するしかない場面が多いことでしょう。だからこそ、横のつながりが貴重なものとなります。他の会社と活用方法の情報交換をするなど、タレントマネジメントの領域では一つ一つが刺激になるところがあると思っています。

グローセンパートナーも実はタレントマネジメントシステムをご紹介する立場ですが(やはりベンダーの方がいらっしゃるとどうしても気を使ってしまうと思うので)あまりベンダーに依存しない形でのコミュニティ・交流の場が作れたらと考えています。

簡単にタレントマネジメント導入のポイントをまとめた資料もありますので、ダウンロードしてご覧ください。

タレントマネジメントシステムについて詳しく知りたい方、相談したい方は、下記からお問い合わせください。

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