コラム

成人発達理論を応用した自律型人材の育て方
HRカンファレンス2022春を終えて

2022/05/19

5月19日のHRカンファレンスにて弊社島森が『成人発達理論を応用した自律型人材の育て方~新入社員・若手社員に求められる心の取り扱いスキルとは~』をテーマに 成人発達理論の概要、成人発達理論の新入社員・若手社員育成への活用について、お話をさせていただきました。 参加者の皆さまから頂いたご質問に対して、回答をまとめました。

頂いたご質問への回答

Q. 無自覚なものに気づくきっかけは?

研修の冒頭で、アイスブレイクをやりますよね。その前後の気持ちの変化をスタートに心の構造について解説しています。よくある気持ちの変化は、「緊張していたけど、リラックスできた」という意見があります。緊張は、自分の思考でコントロールできないので反応。緊張するのは、「ミスする」「何か指摘を受ける」という妄想があり、その奥に「恥ずかしい思いをしたくない」「自分の評価を下げたくない」という無自覚な目的があるとお伝えしています。
この心の構造を使って、葛藤を無自覚に回避する自分に気づけるようにサポートしていきます。

Q. 若手の自己開示力を高める方法は?

自己開示には、深さ(開示のしにくさ)があります。まずは、簡単な自己開示をして、それを徐々に深める研修をしています。
職場に馴染むための「自己開示のスキル」を研修においては、
・自分の自己開示+質問(私は、静岡出身ですが、先輩は?)
・相手の自己開示(私は、金沢出身だよ!)
・共通点を見出す(実は、私も幼稚園まで金沢にいたんです)
のように、共通点を見出すことで仲良くなるという演習を盛り込んでいます。
深い自己開示とは、自分の感情や、自分の悩みを打ち明けることになります。自己開示には深さがあって、研修時にこの深い部分の共有をすることで、徐々に、お互いに信頼関係が深まることも体験します。

Q. 自己開示が高まると、どのような効果で離職防止になるのか?

離職原因は、主に2つあって、
①周囲の期待に応えられない自分を自己否定する
すぐに職場で活躍できないのは当たり前なのですが、勝手に自分はできないと思ってしまい、ぐるぐる負の連鎖が始まる。
②自分が思っていた職場ではないと他者を否定する
自分が思い描いていた職場像と異なる、上司・先輩から「つべこべ言わすにやれ」と言われて会社が嫌になる、といった退職のトリガーになる事件があるといわれています。
上記の2つの悩みが発生したときに、相談できる仲間がいると、ただただ聴いてくれるだけで気持ちが切り替わったり、同期も同じことで悩んでいることが理解でき、立ち直ったりできます。

マネジャー研修などで、〇年入社のマネジャーは優秀だと言われたりしますが、その期のマネジャー同士が仲良いことがほとんどです。お互いにコミュニケーションすることで、視野が広がり、自然に発達促進も起きていると考えています。

Q. 内省の概念の理解に上手な方法があれば教えてください

同じ「内省」という言葉でも、新入社員の内省とマネジャークラスの内省は深さが異なるので、内省の意味合いも変わってきます。新入社員クラスでは、「反省」と「内省」の違いを解説します。

「反省」とは、失敗したこと・うまくいかなかったことを振り返り、次からの改善に繋げる行動です。自分のマイナス面ばかりに気を取られ、マイナスをゼロに戻すための行動になりがちです。

「内省」とは、失敗したこと・うまくいかなかったことだけではなく、成功したこと・うまくいったことも振り返ります。自分の経験を振り返り、客観的に分析し、そこから気づきを得る行動です。自分の気持ちもプラスになります。

内省を実践するには、経験学習の理解をしてもらうことが良いと思います。研修では、経験学習のプロセスで、自分の感情を表現することも問いに加えています。

Q. 内省のための上手なファシリテートとは?各人が自ら成長していける内省支援の方法は何かありますでしょうか?

内省≠気づきには良いも悪いもないと思います。逆に、内省したことを判断してしまうと、誰か(上司や講師)の意図を汲んだ内省になってしまいます。【問い】だけ決めて、書く内容は評価せずに(書き方の修正は必要)、良いと持ったことをフィードバックしてあげることが大切です。

経験学習が良いと思いますが、参考までに弊社の問いの紹介です。

  1. 今日(昨日)行った仕事の中で新しく実施したことや、成功体験・失敗体験など印象に残ったことについて、できる限り具体的(5W1H)に記入してください。
  2. ①で記入した取り組んだことがうまくいった原因・理由、うまくいかなかった原因・理由を記入してください。それ以外でも考えたこと・感じたことがあれば記入してください。
  3. ②を書いたことで生まれた気づきが他の状況でも活用できるように、今後に活かせることを可能な限り具体的に記入してください。
  4. 上司や先輩に質問したいことや、相談したいことがあれば記入してください。

Q. 葛藤ゾーンは1on1でヒアリングしていくようなやり方で自覚に繋げていくのが良いでしょうか?

それでよいと思います。グローセンパートナーで提供している研修では、葛藤ゾーンのワークの型を新入社員に伝えて、葛藤が起きたときに書いてもらっています。同期同士でお互いに共有することで、葛藤に気づかなった人も、葛藤のイメージが湧くようになります。

Q. 新入社員の時に所感・レポートが多くとても負担でした。内省の方法や人事の配慮は必要だと思いますが、効率的に進める方法はありますか?

弊社で実施した際に、受講者によって差があり、レポート作成に1時間ぐらいかけたり、土日に書いたりする方がいらっしゃいましたので、最大10分などルールを決めました。書くには慣れが必要なので、徐々に量を増やせばいいと受講者に伝えています。

Q. 成人発達理論とインテグラル理論の違いがいまだにわからないです

成人発達理論とは、数多くの理論が存在します。それを、ケン・ウィルバーという思想家が、1つの概念にまとめたものをインテグラル理論と称しています。

Q. 発達のサインはどのように察知できるか?

今まで、これで良いと思っていたことについて、違和感・疑問・揺れなどの感覚の頻度が増すようになります。例えば、今まで指示通り仕事をすることに慣れ親しんでいたのに、自分の意見を言いたくなる、上司に反抗したくなるような感覚です。上司が部下のそういった変化を肯定的に捉えることができるためには、成人発達理論を上司が学ぶことは大切だと思います。

Q. 能力向上や心の成長を求めなくなったぶら下がりおじさんをどう扱っていったらよいのでしょうか?

どの発達段階であっても、誰もが「自己正当性」をもって、その行動を選択しています。つまり、ぶらさがっていることも、自分の中では正当性があります。例えば、昔はこれだけ貢献したのだからとか、時代が変わって活躍できないとか。そういった自己正当化の奥には、「承認して欲しい」という欲求が隠れています。それを丁寧に表出させて、癒して、次の一歩を踏み出せるようなワークショップは可能です。ただ、半年ぐらい時間がかかるので、多くの企業で上記の対象者に研修費用をかけないのが実態です。

Q. 自分がどの発達段階にあるのか、客観的に診断できる検査ツールはあるのか?

思考の複雑性を診断するために、YES・NOでこたえられるような診断ツールは、本質的に発達心理学を理解していない可能性があります。本日最後にご紹介したレクティカのLDMAは、インタビューや論文を分析して、測定されます。受検するとなると、20万円以上かかります。簡易の診断ツールはないと思ってくださってよいでしょう。
LDMAについて詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

Q. 若手に向けて、心の成長に関する研修が必要と上層部に理解してもらえるための外堀の埋め方、アプローチについて

上層部には、若手クラスの発達向上は必要だと思っていても、その効果を示せと言われると思います(発達段階:オレンジ・4.0の特徴でもあります)。離職防止・離脱防止・自律的な成長など、少し軸を変えて提案した方が良いかもしれません。どれくらい、離職・離脱が減るのか、我々も検証したいです。

Q. 相手と会話の中で、相手に恐れを自覚してもらう方法

成人発達理論を活用した相互変容1on1研修の中で、恐れのメカニズムと恐れの扱い方をお伝えしています。セミナーも行っていますので、ご関心あればご参加ください。
https://www.growthen.co.jp/seminar/20220616-2/

Q. 高卒生のフォロー。大卒生、院卒生との研修についてくるのが大変。高卒生のみのコミュニケーションの機会も設けたい。

セミナー中にも少しお伝えしましたが、グループリフレクションという方法が効果的だと考えます。週に1回1時間ぐらいで行え、新入社員のケアや状況把握の機会にもなります。

Q.「研修」感が強いとどうしても「やらされ感」「抵抗感」が出てしまう。そういった印象を持つ方もいるなかで効果的な研修実施の方法について。

実務と離れたケーススタディのようなものだと、やらされ感を生みやすいです。グローセンパートナーでは、実務上の課題、例えば忙しい上司にどう声をかけるか?自分には到底できないと感じる仕事とどう向き合うか?などを研修の中で扱います。実務上の課題解決が研修を通じてできないか?を考えてみるのも一考かもしれません。

Q.心の成長以外に、自律型人財を育成するために必要な要素としては何が挙げられるか?

良好な組織風土、上司部下間の関係性など、自律的に動く阻害要因を取り除くことが重要です。御社の中で自律的に動いて、と言われたら、どんな心の声がありますか?そこにヒントがあると思います。

Q.固定思考で、従前追従し続け、自らの思考・行動・成果とコンペチタを比較して本質の問題・課題に気付き・分析して学び・成長しない人と組織の思考・行動を変容する為のアプローチ・方策を教えていただきたい。

一つは機会の提供です。これまでのスキルだけでは対応できない体験があると、変容のスイッチが入ります。他部署への異動、専門外の部署のマネジメントをする、などの異種体験ができないか?を検討してみてください。どうしても難しい場合には、公開型研修などで他の企業の方々に触れる機会を作って自己を見直す機会を作るなどが有効です。

最後に

弊社では、成人発達理論に関するセミナーを定期的に開催しております。
成人発達理論についてもっと詳しく知りたい方、興味のある方は、お気軽にご参加ください。
https://www.growthen.co.jp/seminar/cat/jinzai/

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