コラム

成人発達理論と頭の中の関係性

コラム記事

2021/12/07

執筆者:島森

2021年8月から『入門 インテグラル理論』『人が成長するとはどういうことか』などの著者である鈴木規夫さんのコンサルティングを受けております。月に1回ミーティングをしているのですが、途中で繰り広げられる対話が面白く、今日は『成人発達理論と頭の中の関係性』について触れたいと思います。

規夫さん曰く
「発達段階が上がるからといって、脳の領域が広がるわけではない」
「発達段階が上がるとは、新しい概念を獲得することであり、何かを手放すことである」
と話をしていました。

「仕事が忙しいから、人材育成ができない」は、自分の業務遂行で頭がいっぱいの状態

よくある事例で解説すると、
「仕事が忙しいから、人材育成ができない」という言い訳をよく耳にします。
このような発言をする人は、自分の頭の中が、自分が進める業務遂行で100%になっている状態だと説明できます。

つまり、頭の中の稼働が100%になっているので、他に余力がありません。よって、今の頭の中の10%ぐらい何かを手放し(やめる・諦める)、まずはスペースを作ることが優先になります。

育成が先ではなく、自分がこだわっている部分、自分が専門性を高めたい部分、自分で課題を解決する快感などを手放さないといけないということです。手放すことで、ゆとりができ、腰を据えて後輩と向き合ったり、ゆっくり後輩の相談に乗れたり、後輩を観察できるようになります。

それぞれの立場で頭を100%稼働させて頑張っている。大切なのは余白を作り続けること

これを人が成長するモデルに当てはめてみます。

新入社員レベル

まだまだ頭の中の引き出しに余裕があるはずなので、まずは知識・スキル・考えることなど含めて、頭の中が100%になるまで、インプットしたり、体験する段階

一人前レベル

一人で定常業務を進めることに頭を100%使っている段階。仕事を減らすこと(改善や工夫)を通して、頭に余力を作って、チーム貢献したり、専門分野のインプットに時間をかけられるようにする。

自分の経験からすると、「このまま全部の仕事をやったら、死んじゃう」と思ったことがあり、仕事を減らそうと思ったことがありました。カギは、自分一人の仕事を減らす工夫かと思います。

スペシャリストレベル

一人で、専門的な知識・経験を使って、付加価値を上げることに100%頭を使っている段階。一人でやることの限界を感じて、自分のこだわり(ココまでの水準でないとお客様に納品できないとか、品質に関する過度な管理など)を手放し、自分の頭の中というか、自分の体の稼働を下げる必要がある。余白ができることで、後輩育成や他部門・他者とのコラボレーションができるようになる。

自分の経験からすると、スペシャリスト魂があり、(もしかしたらお客様が望んでいるレベルより)高いレベルのサービス提供にこだわっていたことは、つい最近まであります。

マネジメントレベル

自分の中で、ありたい姿に向かって、終始シミュレーションしており、計画・段取りで頭の中が100%になっている段階。逆に、部下がその計画・段取り通りに進めないと、怒りを感じてしまう。部下を信頼して、安心して任せる、一方で成果が多少小さくても、ぶれても許せる胆力がつくことにより、頭の中に余白が生まれる。その余白を使って、部下育成や組織の健全化に時間が割けるようになる。

自分の経験からすると、自分で自分を苦しめていた、同じく自分が部下を苦しめていたと痛感することがポイントになりました。可能であれば、6ヵ月ぐらい休みを取ることをお勧めします。

経営者レベル

ほぼ、マネジメントレベルと一緒ですが、一つだけ伝えたいことがあります。
方針を出すときに、新しい施策を1つ出すとすると、新しいことには時間がかかるので、やらなくてもよい施策を2~3つ出す必要があると、規夫さんが言っていたことが印象的でした。つまり、やることばかりではなく、やらないことを明確にすることが必要です。でも、これにはやってきたことを手放すと何かが起きるという恐れが生じるので、恐れを手放すことが1つの峠かもしれません。未来に自信がある、未来を操れる自信みたいなものが必要かもしれません。

皆さんは、それぞれの立場があると思います。
それぞれの立場で、頭を100%稼働させて頑張っていると思います。
しかし、大切なのは、その稼働率を85~90%に下げることです。その余白を作り続けることが、発達段階を上げるために、必要なことかもしれません。

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