コラム
新人育成で成人発達理論を活用した 主体的な行動を促す「心の成長」支援とは
HRカンファレンス2021秋を終えて
コラム記事
2021/11/18
11月17日のHRカンファレンスにて弊社島森が『新人育成で成人発達理論を活用した 主体的な行動を促す「心の成長」支援とは』をテーマにお話をさせていただきました。 参加者の皆さまから頂いたご質問に対して、回答をまとめました。
頂いたご質問への回答
Q1. 自我発達理論で示される「垂直の低下」とはどのような意味でしょうか?
一次的、または永続的に本来あった発達段階のパフォーマンスを発揮できなくなる状態をいいます。生活環境などの変化により、ストレスがかかり、またはトラウマとして心に傷を負って、それがパフォーマンス低下につながるイメージです。メンタル系の疾患にかかることも該当します。なお、発達には一時的な退行も重要なプロセスだと言われております。まれにですが、特に対応が必要な場合は、臨床心理士の方のお力も借りたサポートを弊社では実施しております。
Q2. ヒューマンコアとの関連性を教えてください。
(他の皆さんに参考になるように一般化して回答します)
インテグラル理論では、「レベル(発達段階)」「ライン」「タイプ」という表現で整理しています。今回、レベルについては講演内で簡単ですがお話したので、省略します。
ラインは、発達段階にも様々な種類があります。コミュニケーションや思考力、感情、モラルなども発達段階があると捉えてください。その中の1つとして、自我の発達段階をご紹介しました。
一方でタイプは、本質的に優劣や順序をつけることのできない性格や行動の類型です。MBTIやエニアグラムによって診断することができる領域です。ヒューマンコアとはこの領域のことを指します。
ヒューマンコアとの関連は、タイプ自体は変わりませんが、発達段階に応じてタイプの発揮のされ方や、課題なども変化していく点が挙げられます。
アンケートにご回答頂いた方にお送りした講演資料(抜粋版)の7ページもご覧頂くと理解が深まるかと思います。
Q3. 直接の発達支援が難しい理由を教えてください。
以下は個人的な見解になりますが、鈴木規夫さんからのアドバイス、これまでの研修やコンサルティングの経験からお答えします。
まず発達理論における最新の見解としては「直接の発達段階を測定・支援することはできない」というものがあります。
例えば、職場において現れる発達段階と、家庭で現れる発達段階は異なることがあると思います。こう考えていくと、絶対的な発達段階というものは実質的には存在せず、また、仮に測定したとしてもそれが実用的かどうか?という点に疑問が残ると考えています。
よって、最新の潮流では、例えば「仕事における意思決定の場面において現れる発達段階を測定する」といった測定が主流になりつつあります。
これは発達支援においても同様で、直接的に発達支援を行うというよりは「意思決定における発達支援を行う」「戦略策定における発達支援を行う」など領域と掛け合わせて発達支援するアプローチが行われつつあります。
Q4. 発達段階が上がっても、必ずしもパフォーマンスが上がるとは限らないのに、なぜ心の成長支援をするのでしょうか?
まず、我々の見解をお伝えすると、発達段階を踏まえて人を配置できた組織と、そうではない組織を比べると、やはり組織のパフォーマンスは前者の方が高くなる傾向があると考えています。
ただし、発揮されるパフォーマンスはビジネスモデルや組織風土などが複雑に絡み合った結果になるので「必ずしも」と表現が入ります。
発達段階が高く、様々な視点・視座を持ち合わせてクリアな意思決定ができる経営層と、部下の多様性を受け入れられるマネジャーを配置できれば、組織としての生産性は上がると思います。
ますます複雑性や多様性が高まっていく環境変化を踏まえると、発達段階の向上がビジネスパフォーマンスに関連する影響度合いは今後増していくと考えています。
ただ、発達理論を学ぶと、つい発達段階が上がる=ビジネスパフォーマンスの向上と短絡的に捉えられてしまいやすい側面もあり、少し慎重な表現をしております。
Q5. 上司(発達を支援する側)の発達段階も影響するのでは?
おっしゃる通りです。発達理論の観点では、発達段階の低い人が高い人を支援することはできないと言われています。
また、一つの発達段階を向上させるには5年~10年程度必要だと言われており、例えば、管理職になったからといって、急に発達を促進することは困難です。だからこそ、我々は新入社員の時から発達支援を行うことが重要であると考えています。
ただし、人事コンサルティングの経験から、自我の発達段階と、人事制度の等級定義や行動基準は似通っている部分もあり、その定義に基づいてしっかり昇格管理することで、実質的に発達段階を踏まえた人材マネジメントは可能だと考えています。
具体的には、等級定義や行動基準を成人発達理論の要素も含めて策定したうえで、その定義に基づいた昇格管理をすることがポイントになると思っています。昇格については現場の意向などで決められているケース(例:年齢的にそろそろ課長にするタイミングだ、など)等も多く、このあたりの運用を見直すことが重要になります。
Q6. レクティカのLDMAのスキル定義を教えてください。
こちらのHPにスキル定義が掲載されていますので、そちらをご覧いただくと正確に把握できます。
https://lecticalive.org/about/ldma#gsc.tab=0
特に注目するべきポイントは、LDMAには視点取得能力や複雑性を認知する力を含んでいる点だと考えています。これらは「捉え方の広がり」「器の拡大」「人間力」と言われてきた領域であり、精神論に拠りがちであった部分がスキルとして定義されている点が優れていると考えています。
なお、LDMAはそのまま新入社員に用いるにはオーバースペックかと考えておりますが、管理職層や経営層に対するアセスメントとしては極めて有益だと考えています。
ご興味があればご紹介することが可能ですので、その際はお声がけください。
Q7-1. 経験学習を定着させるポイントは?
Q7-2. なかなか、経験学習を定着することが難しい印象を持っています。リフレクションを定着することができれば・・・と思いますが、日々の業務の中で過ぎ去ってしまっています。定着するためのポイントなどありますか?
新入社員の経験学習ワークの書きぶりを見てきて、
・そもそも自分の考えや内面を言語化することに慣れていない
・外的経験・内的経験の境目が分からない
・過去と将来の概念がごっちゃになる
などの傾向があることがわかりました。
そのような中で、経験学習のフレームのすべてを、すぐに網羅的に活用するということは難易度が高いことであると考えています。場合によっては、OJTトレーナーの方であっても難儀することもあります。
対策として、下記のようなことを実施しています。
- 最初は問いを少なくする(今日の出来事・学んだこと・感想ぐらいからスタート)
- 徐々に問いを増やしていく(問いを増やすために、解説を加える。書けない人は個別フォローを行います)
- 記述自体は簡単なレベルに留め、書いた後に新入社員とOJTトレーナーで面談をしてもらい、そこでの気づきを再度記入する
- 振り返りについて振り返る時間を定期的に設ける(今回ご提案させていただいたように、月1回60分程度で良いのでオンライン上で、1か月間の振り返りアウトプットをシェアしながら、それを活用して改めて振り返りを行う=ダブルループラーニングと言われています)
経験学習にもレベルがあり、レベルに沿ったサポートをすることが定着には大切だと考えております。
Q8. 心の成長の支援として、恐れを取り扱うスキルを支援することをどうオンライン上でも行えるのかな?と感じました。
研修実績からお伝えすると、オンラインでも十分に行うことができたと、当社もお客様も感じております。(ただ対面だとさらに効果を高めることが可能かもしれません)
ポイントとしては以下が挙げられます。
- 恐れを取り扱う方法を伝える(自己流にしない)
- グループでシェアする機会を取る(一人で悶々としないようにする)
- 我々のような外部講師や人事担当者などが必要に応じて捉え方の転換を促すサポートをする
個人で完結させるのではなく、1か月に1回程度集まる時間を取り、そこでフォローアップしていく、事後課題を出してその結果の随時シェアを通じて、変化を認知しやすいようにすることが極めて有効です。
Q9. とても面白いです!が、結局地道な成長が重要ということで、成人発達理論を使う意味のようなものがまだわかっていません。
発達理論を活用する意味・メリットとしては、成長の地図、コンパスとして活用できることが挙げられると考えています。ただ闇雲に地道にがんばれと言われても、人はなかなかがんばり続けることはできません。
発達理論を用いることで「いまここにいて、次のチャレンジはこれ」と見通しがつくことで、成長や支援に対して前向きに捉えやすくなると考えています。
Q10. 発達段階が変わるタイミングで、積み残しが無いようにするべきとのことですが、積み残しがあるのかないのか、どのように自身または他者が判断するのでしょうか?
積み残しは、その人の反応行動となって現れるケースが多いです。例えば、発達段階2で自分の意見を(利己的・衝動的にでも)発信する経験を十分に体験していないと、発達段階3になった時に周りの意見を鵜呑みにして、自分の意見や考えが自覚できなくなる、もしくは周りの意見を自分の考えと一緒くたにして捉えてしまうなどどいったことが起こり得ます。
ただ、本人にとっては、これらは無自覚的なものであったり、正しいと思ったりしているものなので、周囲からのフィードバックが効果的です。
既存の方法論では、360度評価などの多面診断を活用することでも、積み残しの発達課題は見つけやすくなります。
Q11. 新入社員によって、自己肯定感や自己効力感を持っている程度に差がある場合、個々の指導にならざるを得ないと思いますが、集合研修とOJTでどう区分したらよいでしょうか。
方法論をお伝えするのは集合研修でカバーできます。ただ、個人の捉え方のクセ、習慣のようなものはやはり個別でフォローする方が効果的です。特に最近の若手社員の方は、センシティブな部分を集団の中で開示することに抵抗がある方も多いので、個別フォローの重要性は増していると考えます。
我々が研修を実施する際は、研修の間に30分間の個別面談を行うなどの取り組みをしています。
また、事後課題などを通じた成功体験をシェアすることで、認知の変化を促すこともできます。同じ立場である新人社員の方が、葛藤を乗り越えチャレンジしていることを知ることで、ネガティブな認知を持つ方も少しずつ変化していきます。新入社員の方にとっては、同期が変化していくインパクトは我々の想像以上に大きいようです。
Q12. 3人称(心の中の声)で考えるのは難易度が高いと思いますが、他にどのような方法がありますでしょうか。
新入社員の方は、自分の内面の声をあまり自覚していなかったり、抑圧しやすい傾向があります。その際は「自分ならこんな指示だったら、もうちょっと丁寧に指示してほしいと思うけれど、どう?」などと水を向けてあげると、「確かにそうかもしれません」などと、本人が自分の本心に気づきやすくなります。
このように、慣れないうちは他者から引き出してあげる関わりをしていくことで、3人称(心の中の声)に気づきやすくなっていきます。
新入社員の「心の成長」支援とは?
新入社員の心の成長を支援する研修について、詳しく知りたい方は、下記から資料をダウンロードしてご覧ください。
研修体験会・セミナー
今回ご紹介した新入社員の心の成長を促進する研修プログラムの中から、「葛藤のワーク」などを体験いただける研修体験会を開催します。
2021/12/03(金) 10:00~11:30
https://www.growthen.co.jp/seminar/20211203/
2021/12/08(水)10:00~11:30
https://www.growthen.co.jp/seminar/20211208/
最後に
沢山のご質問ありがとうございました。講演内容に限らず、不明点や質問などがありましたらお気軽にお問合せください。
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弊社では、成人発達理論に関するセミナーを定期的に開催しております。
成人発達理論についてもっと詳しく知りたい方、興味のある方は、お気軽にご参加ください。
https://www.growthen.co.jp/seminar/
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