コラム
チェックインと成人発達理論の関係性
コラム記事
2021/11/04
執筆者:島森
2021年8月から『入門 インテグラル理論』『人が成長するとはどういうことか』などの著者である鈴木規夫さんのコンサルティングを受けております。このコラムでは、「チェックインと成人発達理論の関係性」について書きたいと思います。
チェックインとは?
ワークショップに参加すると、チェックインからスタートすることが多いですが、皆さんは「チェックイン」についてどのように感じていますか? 実は、私はこのチェックインが嫌でした。なぜかというと、「自由に話して良いと言われても困る」というが最初の理由でした。次に、「ああ、自由でいいんだ」と腑に落ちた後、違う嫌だが立ち上がりました。その嫌さを言葉にすると、最初のチェックインで参加メンバーを値踏みしている自分がいて、逆に「しっかりと言わないと」「何か良いことを言わないと」と自分が評価されないという自分がいました。しばらく、チェックインで何を話そうか事前に考えていました。
そもそも、チェックインの機能は何かというと、心理的安全性を高めることにあると思います。
- 話をする人は自分の心の中や感情に目を向け、感じたままを表現する。
- 聴き手は、話し手を受け入れる。
- これにより、話し手が聞いてもらったという安心感を得る。
このプロセスを繰り返すことで、気持ちが場に集まり、エネルギーが巡り、お互いの安心感につながるのだと思います。チェックインの機能からすると、僕がやっていたことは、場に悪影響を与える以外なにものでもないことに気づきます。
チェックインと成人発達理論の関係性
さて、本題です。チェックインと成人発達理論の関係性に戻ります。
現在弊社では「心の成長を促進する新入社員研修」を開発しています。その過程で、規夫さんからアドバイス頂いたものを、島森視点でお伝えします。
組織人として求められるのは「個としての自己の意見や見解を表明すること」
新入社員にとって、今後組織人として求められる重要な能力のひとつは、個としての自己の意見や見解を表明することです。
それは、ときとして関係者と健全な「衝突(議論など)」をして、そのプロセスの中で異なる意見や見解を統合し、共通の意見や見解を見出していくことのベースになります。
そのためには、まず個としての自己の意見や見解を持つことができるようになる必要があります。これは、他者の期待や要求に応えて、それに沿う意見や見解を表明するということではなく、先ずは「自己」の中に生じる感覚や意見を認識して、それを受容・肯定できるようになるということです。
チェックインは、自己をありのままに認識・受容し、それを表現する基礎練習になる
チェックインは、自己をありのままに認識・受容する能力、それを表現する能力を鍛錬するための重要な基礎練習となります。
特に、多くの新入社員は、学生までは、周囲(親・先生・友達など)の期待に応えることを、最も重要なことと捉えて成長してきたかもしれません。しかし、組織において個性を発揮し、個の価値を提供するとは、異なる感性や視点を有した社員が、互いに意見や見解を衝突させる中で営まれるものである。今後は、これまでとは異なり、個としての自己に誠実になり、それを表現する能力を鍛錬していく必要になります。
つまり、周囲の発言が気になったり、周囲に合わせて発言したりするのではなく、自己が感じたありのままを表現することが大切になります。
そういった意味で、チェックインは、単なる「アイスブレイク」としてではなく、今後、長期的に開発していく必要がある、「自律的な個として在るための総合的能力」を開発するための非常に重要なワークです。表現を変えると、自律的な人材を育てる大切な一歩になります。
また、自己をありのままに認識・受容したり、それを表現する能力を鍛錬したりすることで、周囲の関係者もこうした能力を発揮しやすい雰囲気づくりに貢献するので、新入社員の能力開発だけではなく、健全な組織文化の醸成に貢献することにもなります。
対話ができる組織、自律的な社員育成のために
最後に、これらは全て合理性段階(オレンジ段階)の能力ですが、実は日本人の場合には(特に優秀な人材ほど)、それらの能力を構築するための基盤(自己に誠実・忠実であること)が脆弱なので、新入社員には、このあたりの課題があることを示してあげると良いと考えています。
心の成長×新入社員研修では、自己の中に生じる感情や反応に気づくというワークを多く取り入れておりますが、それは自分自身が「何を感じているのか」「何を考えているのか」を感じ取る練習になります。
このプロセスを飛び越して、急に組織のルールを守れ、上司の言うことおり動けと言われたら、必ず自分の気持ちに蓋をする人材=非自律的人材が育ちますよね。
今回は、新入社員研修におけるチェックインをテーマにしましたが、対話ができる組織、自律的な社員育成のために、上記の意図をしっかり説明したうえで、チェックインを実施すると有効かもしれませんね。社員の自律性を阻害しているのは、経営者・管理職本人だと早く気づけるためにも。
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