コラム
自我の発達段階における二人・三人・四人・五人称視点とは
コラム記事
2021/05/13
今、鈴木規夫氏の『インテグラル心理学』勉強会に参加しています。鈴木規夫氏は、スザンヌ・クック=グロイターのもとで学んだことのある方です。勉強会で、二人・三人・四人・五人称視点とはどのような視点なのかを質問し、非常に分かりやすく解説いただいたので、僕なりの言葉も補足して整理しました。
※スザンヌ・クック=グロイター著の自我の発達については、こちらをご覧ください。
http://integraljapan.net/articles/JTA2018EgoDevelopment.htm
二人称視点 インテグラル理論の意識のレベル:アンバー
「私」と「あなた」で世界が成立する視点です。
「私たち」で完結できる関係性です。
具体的な話をすると、
Aさん「このラーメン(絵・音楽・主張)美味しいね(美しい・リズム感がいい・正しい)」
Bさん「そうそう、美味しいね(美しいね・リズム感がいいね・正しいね)」
で完結する関係性です。
ただし、その美味しさ・美しさ・リズムの良さ・正しさを第三者に客観的に証明しなくてもよいということです。中学生・高校生ぐらいのお友達で、「これいいね!」「いいね!いいね!」とコミュニケーションしているような視点になります。相性が合うメンバーで、感覚的に合意形成している感じです。
三人称視点 インテグラル理論の意識のレベル:オレンジ
「私」と「あなた」+「第三者」で世界が成立する視点です。
会ったこともない第三者に、客観性・合理性をもって納得してもらうロジックを形成できるかがカギになります。
ラーメンの美味しさ・絵の美しさ・音楽のリズム感の良さ・主張の正しさを第三者に分かってもらうことができる視点になります。
大学生でいうと、インプットしたものを自分なりの主張を交えて言葉にする「論文を書く」というのがまさに三人称視点になります。論文を書いたときに、その文章を読んだ、会ったこともない人が論理的にその良さ・主張などを納得することが大切です。つまり、第三者の立場を想定して、言葉で表現できることになります。
大学生で論文が書けない人、社会人で分かりやすい報告書が書けない人は三人称視点が培われてないと判断できるでしょう。これは意外に難しくて、専門性はあるけど、それを第三者(経営層・専門知識を持たないお客様)に説明できない人は、まだ三人称視点を保有していないかもしれません。
ただ、企業において経営企画やIR部門に配属になると、経営者や投資家になぜこの判断が正しいのか?なぜこの戦略が正しいのか?どのようなリスクがあるのか?を合理性をもって説明する責任が生まれるので、少なくとも三人称視点は芽生えていると言えるでしょう。三人称視点は限定的な部門で必要とされたり、マネジャーレベルで求められるハードルが高い視点なのです。
四人称視点 インテグラル理論の意識のレベル:グリーン・ティール
「私」と「あなた」+「第三者」に加えて、「自分が属している世界観を越えた第三者」の視点も持っている状態です。
上記で解説した経営企画やIR部門のメンバーが、経営者や投資家に客観的・合理的に説明できたとしても、そこにはある前提共有があります。
例えば、「資本主義で整理している」「地域限定(アマゾンの奥地では伝わらないかも)」「宗教観や思想(富は平等に分配することが正しいという価値観には伝えにくいなど)」の前提条件の上に成り立つものだということです。
この前提としている世界観を越えた第三者の想定ができる視点を持っていることになります。既に、私も表現の限界を超えた感じがあります。この視点を持つためのきっかけとして、事例を紹介します。
知り合いの話ですが、高校のときに修学旅行で中国に行ったときに、乗車していたバスが人を轢いたのですが、轢いた人をそのまま見過ごし、バスは走り続けたそうです。その晩、その友達は仲間と「人間の生とは何か?」を一晩語り合ったと言っていました。そのように世界観がゆさぶられるような出来事でそういった視点が身につくこともあるでしょう。
また、大病で入院したときに、それまでは「売り上げをどうする?」「ローン返済どうする?」などを考えていたことが一変して「人生とは何か?」「幸せとは何か?」など今までの前提を覆して考えることも、この視点を身につける変化点になるようです。よく、大病で入院した人が、人が変わって帰ってきたという話を聞くのは、このような視点を身につけたからかもしれません。
「死」という言葉がよぎるような、前提を覆す体験が必要なのでしょう。その時に、自分の本質が見てきて、既存の価値観に左右されずに、本当にやりたいことが見えてくるので、この段階こそ、マズローがいう自己実現の段階になります。自己実現は意外に高い段階なのです。本質が見えてしまうので、現状の政治・経済に関して冷静な視点・批判的な視点が芽生え、生きるのがつらくなることもありそうです。
五人称視点 インテグラル理論の意識のレベル:インディゴ
「私」と「あなた」+「第三者」+「自分が属している世界観を越えた第三者」に加えて、「人間という存在が突きつける限定条件を越えた第三者」の視点も持っている状態です。
日本であり、アメリカであり、インドであり、それぞれのパラダイム・宗教観には共通項があり、人間という存在が突きつける限定条件(五感を通じて認識する・心/意識が存在するなど)を理解し、人間だからゆえに自由になりにくいことを客観的に理解できる状態です。一方で、人間の宿命を理解できることで、自由になれる可能性も秘めています。深い瞑想やヨガ、山伏修行などのプロセスで、一時的に非日常の意識状態として体験できる領域でもあります。
ここまで到達できる人は、アメリカの調査によると0.5%ぐらいのようなので、なかなかイメージが湧きにくいかもしれません。
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