コラム
人材育成会議のすすめ│一人ひとりのユニークポイントを活かした人材配置・機会提供を目指して
コラム記事
2019/12/19
評価制度の運用において、人はユニークで多様性のある存在、モチベーションのツボも多種多様という人間本来の視点に立つべきだと思います。そういった観点で、能力評価・行動評価・コンピテンシー評価などは活用に限界を感じます。入社1~2年目ぐらいまでは、規律の遵守・マナーの定着などを目的に基準が必要だと思いますが、それ以上の社員には、一定の評価基準であてはめて評価することが困難な時代になっていると感じます。
一人ひとりのユニークなポイント(強み・優れている能力・大切にしている価値観・成長したい方向性)などを明確にして、それに基づいて適材適所・適切な機会提供ができると良いでしょう。すでに、一定の基準(目標管理含む)で人を評価する時代は終わるのではないか考えています。
評価制度のどのような機能を強化したいかについて、セミナーなどでグループ討議すると、ほぼ2つの機能に収束します。1つは人材育成の機能・もう一つは適材適所の機能になります。ここでは、適材適所の機能について解説します。
一人ひとりの強み・弱みをじっくり見極め、強みを発揮できる場所を探す
適材適所の解説の前に、1つお話しておきたいことがあります。マネジメント研修などで、一人ひとりの個性と活躍できる場所のマッチングが大切だと伝えています。この時に、1点だけ私の経験則に基づいた主張をしています。それは、強みは伸ばすことはできるが、弱みは克服できないのではないかということです。この主張は、自分がマネジャーだったときに部下の弱みを直そうと、部下にプレッシャーをかけ、自分自身も苦労した経験からです。
弱みについて、3つの観点から解説します。弱みには大きく分けて、「能力的なもの」「メンタルモデル的なもの」「先天的なもの」に分けられると考えています。
まず、能力的なものについては、緻密性がない人に緻密性を持たせることが難しいように、能力開発は難しいと思っています。365日24時間体制で支援すると不得意部分の能力開発ができると言われていますが、ビジネスにおいて一人に対して、そこまで時間をかけることは不合理だと考えています。
次に、メンタルモデルとは、その人の幼少期の親の影響や、思春期の友達から受けた、その人が持っている信念・根底にある固定観念のようなものです。親から厳しくしつけられた人が、慎重に行動する癖がついているなどが例として挙げられます。メンタルモデルの開放は不可能ではありませんが、そのスキルを持ったマネジャーはごく少数だと思われるため、メンタルモデル開放の支援も困難と考えます。
最後に、先天的なものというのは、何かの欠落した機能のことを指しています。先天的に、何かの機能が欠落していたり(例えば、一般の人より時間の概念が薄い)、逆に何かの機能が多すぎたり(例えば、一般の人より目から入る情報が極端に多い)することを指しています。これも本人が改善しようとしても、変えようがない機能のため、改善は難しいでしょう。
これまで、弱みについて、「能力的なもの」「メンタルモデル的なもの」「先天的なもの」について触れてきましたが、個人的には弱みの克服はビジネスの世界では割に合わないように感じています。一方で、大きな弱みがある人は、差別化できる特別な強みがあるとも思っており、一人ひとりの強み・弱みをじっくり見極め、強みが発揮できる場所を探すことが組織のパフォーマンスを上げる最高の方法だと感じています。近い将来、社内で強みを発揮できるポジションがなければ、社外に視野を向けて活躍の場所を探すことができるようにもなると考えています。
適材適所を実現する「人材育成会議」
組織の適材適所を実現するためには、人材育成会議という会議体を導入することをお勧めしています。人材育成会議とは、年に1~2回、主に一次評価者・二次評価者・人事担当部門が集まって、一人ひとりの「強み・弱み」「評価結果」「今後の育成方向性」「昇進・昇格・異動などの必要性」「研修などの機会提供」「本人の希望(自己申告)」などについて、丁寧に意見交換する場のイメージです。この会議体で情報交換することによって、参加者全員が一人ひとりの個性の把握、評判の交換、計画的な人材育成などが実現できます( 図:人材育成会議の全体概要 参照)。
人材育成会議に必要な準備
人材育成会議の前に、人材データを準備します。下図(人材育成会議の準備データ )のようにExcelシートで準備すると良いでしょう。人事データが整備されていたり、人材管理ツールを導入していたりする場合は、手間がかからないと思います。その人事データに基づいて、会社全体で情報共有したい項目・意思決定したい項目を会議体で検討します。会議体で決定した内容を、上司に展開して面談に活用してもらいます。また、人事部門はそのデータに基づいて、異動の決定・教育研修の設計・経営者育成プログラムの設計などが推進できます。
人材育成会議用データのテンプレートをご用意しました。下記よりダウンロードして、ぜひ人材育成会議にご活用ください。
最後に
評価制度の機能としては、人材の掌握(個性・力量・評判・将来の可能性など)ができる・人材育成の支援ができると考えていますが、社員のモチベーションを高めることは難しいということをお伝えしておきます。報酬決定の査定ばかりに目が向きやすい評価制度の活用方法に、一石を投じることができればと思います。
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