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人事制度コラム
中小企業人事のための賃上げマニュアル:最適な進め方から経営陣の巻き込みまで

2023/05/23

「中小企業で賃上げを実現したいけど、どう進めればいい?」「賃上げを検討するにあたり、世間や競合他社と比較して、適切な基準や水準を知りたい」「経営陣への説得方法がわからない」「ネット検索や情報取集をしても、大企業の事例ばかりで参考にならない」といった中小企業における賃上げに関する悩みは多いのではないかと思います。

賃上げがうまくいくと、「いい人材が採用できるようになる」「エース社員の退職が減り、業績が上がりやすくなる」「社員のモチベーションが上がり、社内が活性化する」といった変化が期待できます。しかし、中小企業における賃上げの進め方や経営者を巻き込むための説得方法に悩んでいる方も多いでしょう。

この記事では、中小企業の賃上げを失敗せずに実現するためのポイントや、押さえておくべき要素を詳しく解説しました。賃上げを検討する際、この情報が皆さんのサポートとなれば幸いです。

本記事は「2023/04/20開催【夜の楽校】 賃上げ・初任給上げにどのように対応すべきか?賃上げにお悩みの人事担当者と人事制度コンサルタントとの対話で考える」の内容をもとにしています。記事にするにあたり、セミナーの内容や資料を一部省略した部分がありますが、詳細を知りたい方、個別相談(無料)をご希望の方は、こちらからお問い合わせください

Index

  1. 賃上げの動向について
  2. 賃上げの際によくある勘違い:ベースアップと定期昇給の違い
  3. 報酬水準の調べ方~業界別・職種別の調べ方、個別企業における調べ方
  4. 賃上げについて人事担当者の方から頂いた質問と回答

賃上げの動向について

最近、賃上げに関する話題が増えており、弊社でも賃上げに関するコンサルティングの依頼が増加しています。質問が多く寄せられるのが、賃上げの動向についてです。

現在の賃上げ動向を分かりやすく説明すると、以下のポイントが挙げられます。

  • 例年に比べて賃上げが大幅に進行している。
  • 賃上げの傾向は今後も続くと予想される。
    その理由は: a. 政府主導で賃上げの推進が行われている。 b. 人手不足が深刻で、優秀な人材を現行の賃金水準では採用できなくなっている。c. 物価上昇が進み、賃金が上がらない状況に対する世間の視線が厳しくなっている。
  • 上記のように社員の採用や定着において、中小企業でも賃金水準が最低条件となってきており、単純に人事的な観点だけではなく、競争力の確保といった観点からも、賃上げ検討の重要度が増している

賃上げの動向を把握することは、企業経営に大きく影響するようになってきました。企業は適切な対応を行い、良質な人材の確保と定着に努めることが求められていると言えます。

ここからは、順を追って賃上げの動向について簡単にご紹介します。

賃上げを行うにあたり、どの程度の額を設定すべきか?

最初に議論が集中するテーマは「賃上げを行うにあたって、どの程度の額を設定すべきか?」です。まず、基本的なデータを確認しましょう。2022年12月の物価上昇率は4%であり、政府は賃上げの基準を4%に設定していることがわかります。

さらに、従業員数が100~299人の企業における昇給率も3.5%と、4%に近い水準です。これらを考慮すると、4%を基準として賃上げの検討を始めるのが妥当だと言えます。

出所:連合ホームページ 2023年4月13日集計

ちなみに、2020年度の昇給率は2%程度でしたが、2020年以降、全国的に賃上げが進んでいることがうかがえます。

満額回答・初任給を引き上げる会社も増えている

賃上げ要求に対して満額回答という会社が増えています。さらに、ファーストリテイリング社やセガ社のように、新卒の初任給を引き上げる会社も増えており、採用競争力を高める観点からも、今後も新卒の初任給引き上げは続くと考えられます。

一方で、新卒の初任給を上げることで企業内に混乱が生じているケースも存在します。例えば、新卒の初任給と入社10年目の従業員の給与が同額になってしまう場合、単に初任給だけを上げるのではなく、全従業員の給与を見直すことが不可欠になります。

弊社でも、初任給の見直しに関するコンサルティングの依頼が増えており、基本給の上昇だけで対応が難しい場合には、手当などを含めた給与全体の引き上げも検討することもあります。

従業員・経営層の双方で昇給やベースアップへの意識が高まる

従業員の視点も変わりつつあります。賃上げが多くの企業で実施されている現状と、最近の物価上昇を受けて、従業員と経営層の双方で昇給やベースアップに対する意識が高まっています。この背景を理解することで、適切な賃上げ対策を進めることができるでしょう。

最近では、特に若手社員の意識が高まっています。例えば、転職理由のトップとして「給与が低い・昇給が見込めない」など、給与を理由として挙げられるケースが増えてきています。他にも転職の際に、最も重視することとして「給与が良いこと」を上げる割合が年々増えています。

賃上げの動向のまとめ

以上が昨今の賃上げの動向になります。ここまでの結論をまとめると、以下のようになります。

  • 例年に比べて賃上げが大幅に進行している。
  • 賃上げの傾向は今後も続くと予想される。その理由は: a. 政府主導で賃上げの推進が行われている。 b. 人手不足が深刻で、優秀な人材を現行の賃金水準では採用できなくなっている。c. 物価上昇が進み、賃金が上がらない状況に対する世間の視線が厳しくなっている。
  • 社員の採用や定着において、中小企業でも賃金水準が最低条件となってきており、単純に人事的な観点だけではなく、競争力の確保といった観点からも、賃上げ検討の重要度が増している

総じて、賃上げは今度もしばらくの間は続くと予想されます。よって、大企業に限らず中小企業においても、適切なタイミングで給与の見直しが必要となる企業が増えると考えています。この状況を踏まえ、適切な賃上げ対策を検討し、競争力を維持・向上させることが求められるでしょう。

賃上げの際によくある勘違い:ベースアップと定期昇給の違い

コンサルティングの現場で、よく話題となるのがベースアップ(ベア)と定期昇給の違いです。特に、人事制度に詳しくない従業員や一部の役員からは、両者を混同した意見が寄せられることがあります。両者の違いを解説します。

定期昇給:現行の報酬カーブや基本給テーブルを変えずに、個人の基本給を定期的(年に1回~2回であることが多い)に上昇させる行為(図版のA→B)

ベースアップ:報酬カーブや基本給テーブルそのものを一律上昇方向にスライドさせ、全社員の基本給を一律で底上げする行為(図版のB→C)

今年のように急激に賃上げが行われる場合には、ベースアップ+定期昇給を行う会社も多いです。

賃上げの観点から言うと、業績の良し悪しに応じて昇給額を変えることは基本的にお勧めしません。その理由は、むやみに昇給額を毎年変動させることが中長期的な報酬カーブに悪影響を与えるからです。昇給は毎年の積み重ねであり、例えば業績が良い時期に入社した社員がどんどん昇給し、業績が悪い時期に入社した社員がほとんど昇給しないという状況が生じると、報酬カーブが崩れてしまうのです。

こうした理由から、業績連動で昇給額を変更することはお勧めしていません。

報酬水準の調べ方~業界別・職種別の調べ方、個別企業における調べ方

実際に賃上げを検討する際、避けて通れないのが、業界や競合他社との報酬水準の比較検討です。報酬水準の調査方法は、大きく「①産業別・職種別の報酬水準調査」および「②個別企業における報酬水準調査」の2つに分けられます。

それでは「①産業別・職種別の報酬水準の調べ方」「②個別企業における報酬水準の調べ方」に分けて紹介していきましょう。

①産業別・職種別の報酬水準の調べ方

(ア)賃金構造基本統計調査を確認する

産業別・職種別の報酬水準を調べる際には、まず「賃金構造基本統計調査」 を確認しましょう。この調査は、対象人数が多く、信頼性も高いため、非常に参考になります。さらに、男女別・学歴別・都道府県別・年齢別など、多様な視点から情報を得ることが可能です。

ただし、産業の分類が古い・粗いことがあり、そのまま自社に当てはめることが難しい場合があるので注意が必要です。産業や職種によっては、読み替えが必要になることもあります。

以下は、他社との報酬水準比較を行った資料の例で す。このように他社との報酬水準を比較することで、自社の報酬水準を客観的に把握することができます。

また、労働分配率の分析を行うこともあります。以下は労働分配率の分析を行った際の資料の例 です。

労働分配率とは、社員が生み出した付加価値に占める総額人件費の割合を指します。労働分配率=総額人件費÷付加価値額(経常利益+総額人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却)で算出しますが、報酬水準の調査では、労働分配率の「傾向」を把握することが主目的です。実際のコンサルティングでは、総額人件費÷営業利益額で簡易的に算出することもあります。

労働分配率の算出後は、以下の2つの方法で比較検討することが一般的です。

  1. 業界別の世間相場と比較する。
  2. 直近5年程度の自社の経年比較をする。

①については、世間相場と比較して高すぎる、または、低すぎるかどうかを評価します。②については、大幅な上昇傾向、もしくは、下方傾向がある場合、総額人件費水準や報酬制度そのものの見直しが必要と判断します。

重要なのは、世間相場との比較だけではなく、経年の変化を見ることです。例えば、世間相場よりも低い労働分配率でも、経年で大幅な上昇傾向がある場合、さらに上昇させることが経営上可能かどうかについて慎重に検討する必要があります。

(イ)求人サイトの平均募集額を調べる

さらに詳細な職種情報を知りたい場合には、求人サイト(求人ボックス、マイナビなど)の平均募集額を調べることが役立ちます。これらのサイトでは、より細かい職種ごとに平均額が掲載されており、実際に存在する金額を集計しているため、信頼性が高いです。これらの調査方法を活用することで、産業別・職種別の報酬水準を正確に把握し、適切な報酬水準設定が可能になります。

次に、個別企業における報酬水準の調べ方について紹介します。

②個別企業における報酬水準の調べ方

個別企業の報酬水準を調査する際には、有価証券報告書、口コミサイト、調査会社への依頼を組み合わせて実施します。

(ア)有価証券報告書に記載のある平均年間給与

個別企業の報酬水準を調べる際には、有価証券報告書に記載された平均年間給与を確認します。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 上場企業に限られること
  • 年間平均給与の集計対象が不明であること
  • 臨時雇用や非正規雇用も含む場合があること

以下は、有価証券報告書を使用して行った報酬比較の例です。

コンサルティングの際には、競合他社などを比較し、自社の水準を客観的に把握する材料として活用することがあります。

(イ)口コミサイト(平均年収.jp、転職会議)

口コミサイトの確認も、報酬水準調査に役立ちます。これにより、場合によってはより具体的な情報を得られることがあります。ただし、以下の点に注意が必要です。

  • 転職者や退職者が自らの意思と経験に基づいて投稿した情報であるため、信頼性に欠ける可能性がある
  • 給与項目が投稿者の判断で書き込まれているため、その判断が情報の信頼性に大きく影響する

口コミサイトは情報の信頼性には乏しいですが、求職者が参照する情報でもあるため、情報としては把握をしておいた方がベターです。

(ウ)調査会社に依頼

最後に、調査会社への依頼も個別企業の報酬水準調査の手段として利用できます。調査会社に依頼することで、給与や賞与の水準や項目に関する詳細な情報が入手できます。ただし、調査会社への依頼には一定の費用がかかるため、その点を考慮する必要があります。

報酬水準の調べ方のまとめ

まとめとして、個別企業の報酬水準調査には、有価証券報告書の確認、口コミサイトの利用、調査会社への依頼など、さまざまな方法が活用されています。適切な情報源を組み合わせて、効果的な報酬水準調査を行いましょう。

連合リビングウェイジの活用

最後に補足として、「連合リビングウェイジ」を活用も視野に入れることができます。

「連合リビングウェイジ」は、労働者が健康で文化的な生活ができ、労働力を再生産し社会的体裁を保持するために最低限必要な賃金水準を連合が独自に算出しているものです。春季生活闘争において「底支え」「格差是正」の最低到達水準を決定する際の参考として、地域別最低賃金審議会における金額審議の際の主張の根拠として、また企業内最低賃金を年齢別に定める際の参考資料などとして、広く活用されています。

連合ウェブサイトより引用

企業は、従業員の生活水準や業界基準を考慮した上で、公平で競争力のある報酬制度を整えることが求められます。コンサルティングの現場では、賃金水準のボトムを確認する際に、リビングウェイジを参考にすることがあります。例えば、40代前後の報酬水準を600万円と定め、それを基にして報酬カーブを設計することが考えられます。

コンサル現場での検討事例

実際のコンサルティングでは、様々な観点からデータを収集・分析し、妥当な報酬水準を検討していきます。以下は、各種データ分析を通じて報酬水準の方向性を決定した事例です。

以上のように、報酬水準の比較検討は、多種多様な視点と切り口で慎重に検討する必要があります。

私たちのようなプロのコンサルタントが支援する場合には社会情勢や業界動向、クライアント企業の状況、経営に対する考え方や、競争力の観点、法令遵守の観点など、多角的な視点と情報を踏まえた報酬制度を提案しています。

ここまでご紹介した方法を用いれば、自社での分析も可能です。

しかし、客観的な分析結果が経営陣から求められたり、人事制度のプロの観点から抜け漏れがないかを確認したい場合には、グローセンパートナーにおいても下記の切り口を網羅した人事制度分析・人件費分析が可能です。

  • 業界動向の視点
  • 競合他社の視点
  • 企業の競争力と人件費配分の視点
  • 今後の人件費推移の視点
  • 払い過ぎの無駄な人件費はないかの視点
  • 各世代で公平性は担保されているのかの視点

これらの分析を通じて、企業の人事制度や報酬水準に関する抜け漏れや改善点を明らかにし、適切な人事戦略を策定することができます。プロの視点を取り入れたいという場合には、お気軽にお声がけください

賃上げについて人事担当者から頂いた質問と回答

ここからは、賃上げの検討について、人事担当者の方からのご質問とその回答を紹介します。

昨年度から賃金制度を変更し、業績や社会情勢に応じて原資を決める形にしました。物価高の影響も考慮し、昇給額をどのように決めるべきか悩んでいます。

原則として、昇給を会社業績と紐づけることはおすすめしません。これは、昇給額を毎年変動させることが中長期的な報酬カーブに影響を与えるからです。実際にコンサルティングをしていても、業績連動で昇給する制度を運用している会社はほとんど見たことがなく、また、プロの視点としても止めましょうと言うことが多いです。

業績に応じて報酬を連動させたい場合、賞与で調整することが一般的です。昇給は固定的・安定的なものと位置づけ、賞与を報酬と連動させ、業績をより意識させるツールとして活用することもあります。

とはいえ、頂いたご質問では、昇給水準について決定する必要があるかと思いますので、その点についても回答します。社会情勢に応じて原資を決める際の観点としては、まず「世間並み」という基準から検討を始めると良いでしょう。基準となる数値を定めやすいこと、従業員の視点から考えても「世間並み」という基準は納得感が感じられるためです。

具体的には、定期昇給2%~3%+ベースアップで対応するケースが多いです。
この基準だと、「わが社は世間並みである」と言える基準です。また、労働分配率のシミュレーションを行い、会社が賃金水準の上昇に耐えられるかを検討します。

実務的な観点での検討の進め方は以下の通りです。

  • 世間並みの基準(例: 4%)を設定する。
  • その基準から定期昇給分(例: 3%)を差し引き、残りの水準(例: 1%)を決定する。
  • 最終的に会社業績などを踏まえて決定する。

賞与を業績連動とする場合、前期の結果を翌期に反映させるという考え方で合っているのか?その年で頑張っている人にフィードバックがないのは問題ないのか?

はい、基本的には、その考え方で合っています。年度内に業績の見通しが立てられる場合、期末(例:3月末)に決算賞与として支払うことが可能です。ただし、見通しが立てられない場合は、翌期に支払うことが一般的です。

コンサルティングでの実務経験から、前年度の成果が夏の賞与でフィードバックされることは受け入れられることが多いですが、冬まで伸びてしまうと遠く感じられることが多いです。

まとめますと、通常、決算が間に合えば決算賞与で支給し、間に合わなければ夏の賞与で支給するケースが多いです。組合のある会社は夏の賞与交渉も春闘で同時に行うケースもあります。

なお、業績連動型賞与を検討する際には、当然と言えば当然なのですが、賞与と連動させる業績指標を特定することが必要です。通常は利益と連動させることが多いです。利益が出ていないとそもそも賞与を支払えないからです。具体的には、利益は営業利益か経常利益のどちらかで設定します。さらに、利益の中でも利益目標の達成率なのか、利益の絶対額なのかなどの特定できる指標を決定します。このように業績と連動させる基準となるものを業績指標と呼んでいます。

その後、業績指標がどの程度なら通常の業績(安定した経営が図れる水準)に当たるのかを定め、通常通りなら賞与は通常通り、高レベルなら増額、低レベルなら減額とします。

組合のある会社の場合は、業績連動に応じた原資案を会社側が作成し、それを組合との交渉の中で固めていくことになります。

初任給の見直しを検討しています。新卒社員は高卒~院卒までおり、大卒社員と院卒社員は世間並み以上の水準であるため、大きく問題はないと考えています。しかし、高卒社員は世間と比較しても低い状態です。高卒社員の初任給だけを上げてしまうと、現在の入社3年目の社員と同じ水準になってしまう問題があります。どのように調整すれば良いですか?

一番シンプルな解決策は全員のベースアップです。これにより、報酬の逆転が発生しません。ただし、経営上の理由で一律のベースアップが難しい場合もあります。そこで、以下のプロセスで初任給の見直しを行った事例を紹介します。

  1. 世間並みに引き上げる前提でモデルを作成し、シミュレーションを行う。
  2. 入社10年未満で報酬が逆転する人は下限を揃える(10年目までの社員が、報酬が理由で辞めることが多く、10年未満を一区切りとした)。
  3. 入社10年以上で報酬が逆転する人は個別事情により調整を行う。

最終的には、シミュレーションを通じて基準通りの補正が問題ない範囲を明確にし、個別調整が必要な社員や対応策を検討していきます。報酬の逆転は従業員にとって納得感がなく、望ましくありません。

以下が報酬水準の補正検討に使用した資料です。

最終的には、上記のようにシミュレーションを行い、どこまでが基準通りに補正して問題が生じないか、個別調整が必要な社員は誰で、どのような対応が必要なのかを明らかにしながら、検討を進めていきます。

なお、当然ですが、報酬の逆転は従業員にとって納得感がなく、モチベーションを下げる要因にもなり、望ましくありません。また、利益が出ている場合には、賃上げ促進税制が活用できます。意外と使っていない会社も多いのですが、総額人件費が上がっていれば活用可能です。

詳しくは以下をご覧ください。

補助金や制度については毎年アップデートされるため、お付き合いのある社労士や税理士の方に確認されることをお勧めします。

グループ会社と親会社で報酬水準をどれだけ近づける必要があるでしょうか?自社はグループ会社なので、親会社を超えることは難しいと思うのですが、同じような事業をしていることもあり、ある程度近づけた方がいいとは思っており、どのように考えたらよいでしょうか?

統計データなどの客観的な数値は今のところありません。実態としては報酬水準を親会社の9割程度に設定することが多いです。かつては8割とも言われていましたが、最近ではそれよりも高い水準が求められることが増えています。

さらに、以下のようなケースも存在します。

  • グループ一括採用で報酬水準を揃える。
  • 親会社の動向と連動させ、親会社が報酬を上げた際に自社もそれに合わせて上げる。

原資の課題解決のために、基本給引上げ時に、賞与を月額(基本給)に振り替えることは一般的に行われることなのでしょうか?

賞与を月額(基本給)に振り替えることは一般的に行われています。近年、固定給を重視する傾向が高まっており、このような方法がより受け入れられやすくなっています。振り替え時には、業績が向上すれば基本給も上がる可能性があるという経営からのメッセージを伝えることが一般的です。

さらに、一定の年齢・等級まで横並びで昇進・昇格が進むものの、その後は成果に応じて昇進・昇格のスピードが変わるという運用が行われることがあります。これにより、基本給は全体的に上がりますが、努力を続けなければ上がり続けることはないというメッセージを含めることが可能です。

賃上げに限らないのですが、人事制度を変更する際の経営層の巻き込みに悩んでいます。経営層の言うこともさることながら、従業員の声も踏まえないと、うまく行かないですし、かといって従業員の声だけに寄り添っても…と思っています。

特に今回のケースでは「賃上げを行う目的は何か?」を経営陣と明確に合意することが最も重要です。例えば、「離職率を減らすために賃上げを行う」などの合意があれば、「離職率を減らすためには、賃上げにおいて何が重要なのか?」という意思決定基準が設定できます。

この点が明確でないと、判断基準が個々の経営陣の価値観によって揺れ動き、結論を出すことが困難になり、制度変更が失敗するリスクが高くなります。賃上げに限らず「人事施策の変更を通じて何を達成したいのか?どのような成果を期待しているのか?」についての認識を経営陣と一致させることが重要です。

また、客観的な事実やデータを提示することも、経営陣の理解を深め、協力を得るために有効です。データや業界事例については、我々のようなコンサルティング会社が提供できます。このような視点からコンサルティング会社に依頼するお客様も多くいます。

制度変更の際に注意すべきは、不利益変更への対応です。不利益変更への対応には、事前のストーリーづくりとリーガルチェックが重要です。多くの事例を経験している我々のようなコンサルティング会社は、難所を克服するためのポイントやリーガルチェックにおけるポイントを理解しています。

これらを知らずに進めてしまうと、思わぬところで抜け漏れが発生する、リーガルチェックのすべてに対応しようとして、そもそも意図していた制度変更ができなくなるなどの失敗があり得ます。

最後に、経営陣と人事部門の意見が対立する場合、経営陣を説得する支援もコンサルティング会社が提供できます。賃上げだけでなく、人事制度の変更などを円滑に進めたい場合、トラブルを避けたい場合は、コンサルティング会社の活用を検討してみてください。

最後に

本記事は「2023/04/20開催【夜の楽校】 賃上げ・初任給上げにどのように対応すべきか?賃上げにお悩みの人事担当者と人事制度コンサルタントとの対話で考える」の内容をもとにしています。セミナーにご参加くださった人事担当者の方の感想を記載します。

今日はありがとうございました。新しい人事制度になってどうするか1年間悩んでいました。ずっと壁にぶつかっていて、「う~ん」と悩んでいる時間が長かったのですが、ちょうど御社のメルマガでぴったりのテーマだったので、今回申し込みました。プレゼンを一方的に聞くだけというセミナーは多いのですが、今回のように直接自社で悩んでいる具体的なことを相談をして、その場で回答をもらえるセミナーはあまりなく、参加できて良かったです。

(女性 経営企画部 部長)

役員からいろいろリクエストを受けていて、それを自分の考えで進めて本当に良いのか、自信がありませんでした。今日、この場で相談して回答をもらえたことで自信につながりました。あとは紹介頂いた資料の中で、このページは自社の提案で使いたいと思うものもあったので、資料も頂けると助かります。途中で紹介いただいた提案書の流れが良いなと思いました。

(男性 人事部 課長)

報酬水準の見直しや賃上げは今後も継続して行われることが予想されます。会社の経費の半分は人件費である、という企業も多く、人件費の変更は、たとえ少額に見えても、経年で見ると経営に大きな影響になります。つまり、ちょっとした判断ミスが、経営に大きなインパクトに直結するということです。

この記事では、そういった判断ミスを防ぎ、適切に進めるためのポイントをお伝えしました。ここまでは賃上げのポイントについて紹介してきましたが、私たちは金銭的な報酬だけでなく、非金銭的な報酬も大切であると考えています。特に中小企業は報酬水準だけを競争しても、大手企業には敵わないことが多く、他の側面も改善して、自社の魅力や競争力を高めることが必要です。

この記事を読んで、報酬水準の見直しや賃上げについてのヒントになればうれしく思います。当社では、人事制度や報酬水準の見直し、賃上げの検討だけでなく、キャリア設計、人材要件の策定、人材育成体系の策定、組織開発などのテーマにも人事制度の検討と合わせて対応できます。お悩みがあればお気軽にご相談ください。お互いに情報交換をしながら、最適な方向性を見つけられればと思います。

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